大人になってから出会った友人で死ぬほど好きな奴がいる。
名を横田マイ(仮名)と言う。
横田マイ(仮名)は底なしの母性を持ち、優しく、思いやりがあり、頭がよく語彙力が豊富であり、歌のおねぇさんみたいな美声で、顔も愛らしく、かつ庶民的な親しみやすさもあって、来世生まれ変わるときには頼むから私を産んでくれと今から予約するくらい素敵な女なのである。
私は横田マイ(仮名)が大好きである。
しかしこの間、私は少しだけ拗ねていた。
横田マイ(仮名)が『家族旅行』に行っていたからである。
へー、いいねー、家族旅行、いいねー、幸せそうだねー、楽しそうだねー
へー
へー
へー。
誤解なきよう言っておくが私は横田家全体の幸せをいつも祈っている。横田マイ(仮名)の幸せが私の幸せである。
横田(夫)が健康で働けますように。
横田(妻)も健康で喉イガイガになりませんように。(喉弱い。)
横田(長男・小学生)がいつもニコニコ学校に行けますように。
横田(長女・幼児)が健康でかたくなな思想を貫けますように。
ごめん、なんか、健康しか祈ってなかったわ。
どんなに仲良くなろうとも、どんなに横田(妻)を愛そうとも、私は横田(妻)とは家族になれないのである。悲しい。
二人で旅行に行っても、ピンの横田だし、ピンの私だ。『ピン×2の旅行』だ。
『家族旅行』と呼ばれる旅行に私は横田マイ(仮名)と行けないのである。ぐぎぎぎぎぎぎg…
だから今日は横田マイ(仮名)と家族になる方法を考えてみた。横田マイ(仮名)は以下の文章をよーく読んで一緒に実現に向かって頑張って欲しい。
●プラン1
横田マイ(仮名)見ているか?お前は以前『妊娠出産が大変だったからもう一人は産めない、でも欲しい』的な事を言っていた。覚えているか?
私に名案がある。先にその名案のメリットを伝えよう。
メリット
①作る手間を省ける。(楽ちん!)
②妊娠期がない(楽ちん!)
③痛い思いして産まなくていい(楽ちん!)
デメリット
①急にやってきた妹(?)がまさかの44歳中年で子供たち動揺。
②デメリット①による子供たちの情緒の荒れ。
うーん。ちょっとデメリットがでかすぎるので、どのような案だったかを発表する前ではあるがこちらの案は却下で。どのような案だったか気になるとは思うが、聞かない方が良い。それが君の今日の幸せの一助となるだろう。
●プラン2
横田家のペットになる。
以前横田(長男)君は犬を飼いたいとおねだりしたことがあると聞く。
きっと今もその気持ちはくすぶり続け、
『犬飼いたいなあ…』
『ハムスターとかなら飼えるかなぁ…』
『もう何でもいいから生き物が飼いたいなぁ…(自棄)』
となっているはずなのである。
そこで私の登場だ。
雨の日、傘を差しつつ帰宅する横田親子。
ふと電柱のそばを見ると「サカイ引越センター」と書いた大きな段ボールがガタガタとうごめいているのである。
「お母さん!なんかいるよ!!生き物かもしれない!」といって雨の中バシャバシャと走り出す長男氏。
その後の展開は書くまでもないのである。私は上目遣いでぶるぶる震えていればいい。(絵面。)
「生き物を買うって大変なのよ!」
「大丈夫!僕がお世話をするから!!お願い!!!」
「……本当に自分でお世話するって約束してよ!」
みたいなテンプレやり取りをして、めでたく私は横田家(ペット)となるのである。
ペットとなった私は従順であるし、三食自分で用意するし、おかずを大目に作って皆様におずおずと小鉢で差し出す。余裕がある時はおかずの作り置きとかもする。
トイレのしつけなども不要であり、トイレで便座をちゃんと下げておしっこするし、うんこする。時々スマホをもって30分くらい出てこなくなることもあるが(便秘。)週一位なので目をつぶって欲しい。
ペットだけど鳴かない。ペットだけどもふもふじゃない。ペットだけどなんか加齢臭する。ペットだけどなんか眼の光がなくて濁ってる。
それでも横田(長男)氏は優しいのでお世話をしてくれる。
日ごとに私は横田家(ペット)として馴染んでいくのである。
でもたぶん家族旅行はおいて行かれる。
(大人一人分余計な費用。)