元恋人と出会って、遊んで、たまーに喧嘩して、すったもんだで先月別れるまでの5年の間に私5キロも太ってたんだけど、えええええ…?この数年で私に何が起こった?もしかして奇跡?
いやいやいや。体重右肩上がり。飛ぶ鳥も落とす勢い。株価なら最高なのに。
久々にまじまじと全裸の自分を鏡で見たら、なんつーか、すごいデブとかじゃないのに、体のいたるところの形が妙っていうか、「なぜあなたがこの場所に?」みたいなところに肉が大移動していたりしてた。主に背中。背脂。
ちなみに乳だけは周りに流されることなくスリムさをキープ。いや、空気読め。お前のスタンスぶれなさすぎんだろ。たまには周りに流されろ。
多分このままのペースでいくと昔話で見た、穴の中で太ってしまって出られなくなった狐みたいになる。(もしくはドアから出れなくてクレーン車発動してでっかい窓から運搬される人。)
ただでさえ世の中に大して貢献もしないぼそぼそした人生送ってんのに、ぼそぼそな上ぶよぶよとか。ぼそぼそでぶよぶよでよぼよぼになるとか。
なんか嫌。特に語感が。
確かにこの5年間、全裸で鏡を見る時は薄目で乗り切っていたし、体重計はただの前衛的なインテリアだと思ってきた。(埃付き。)
ずっと細かく動いていればブレて見えて、デブなの分かんないんじゃね?とか言うせこいライフハックを思いつき、恋人の前で披露もした。デブの模範生である。
しかしそんな行為とはお別れするとき。さようなら、お酒。さようなら、深夜のサッポロ一番塩ラーメン。さようならさようなら。
思い出すのは、先日別れた元恋人に「最近太った気がする」と言うと、
「全然太ってないよ!」
「ちょうどいいよ!」
「まだ大丈夫!」
「やばくなったら絶対言うから!」
とずっと言ってくれていたことなのだけれど、
おい、元恋人よ。お前の「やばくなったら」の「やばい」のエリアは一体どこだ。
今までそんなことを言われて「そうか?(えへえへ)」と納得していた私はここ数年で最高体重ですよ、ともう届かぬ声でお伝えしたい。
こんなに太らしてどうするつもりだったんだ、と。畜産か、と。良い値が付くのか、と。
そもそも元恋人は美的センスと言うものがちょっとずれていて、
私が酒でパンパンになった顔に目くそ付けた起き抜けの顔すら「わー!今日もかわいいねぇ!」と言っていた人なのである。お前のその目は飾りか。
まぁうちの猫にも「太っていてかわいいねぇー」と話しかけていたし、カマキリを見て「うぉー!!かっこいい!」とか言ってたから、私も同じ感じなのだろう。
昨日マジでマジで非常にしんどい事があって、分かりやすくご飯食べられないという状況に陥った。
これはよろしくないと思ったので今日は無理やり食べていたがちょっとオエっとなる。こんな感覚は久々だった。
それで思い出した。
元恋人といたときに私はこんな風に情緒を乱されることなどなかった。ただただ安心に包まれて、猫みたいにめちゃくちゃに可愛がられて、5年を過ごした。
その中でぬくぬくと好きなものを一緒に美味しく食べ、一緒に飲み、私はふくふくと太っていった。
辛いことがあってもただ話を聞いて「大丈夫だよ、あなたは素敵なんだから。」と繰り返し繰り返し言ってくれた。
私はこの5年間本当に幸せだったのだと、彼に幸せにされていた5年間だったのだと再確認する。
手を離した側の人間は、思い出に浸って涙ぐむことも、ごめんねと謝る権利もないし、さよならを伝えたらあとは何も出来ることなど無い。私はそう思っているから別れた事で泣いたりしなかったけど、幸せだったんだな、と思った時、その時だけはちょっと泣いた。
元恋人へ。
お前はどうせ勝手に幸せになれるから幸せも祈らない。
1年後にはまた楽しく生きているだろうと分かっている。
ここのところは私の心からすこしづつお前が居なくなってきてるけど、この5年間お前が教えてくれたものはしっかりと私の血肉になっている。本当に。だから私はこれから私を幸せにすることだけ考えていく。辛いことがあってもお前が言ってくれたみたいに、今度は私が私に素敵だと言う。
それを教えてくれて、ありがとう。
だけどこれだけは真顔で言っておきたい。
「いいなぁ~脚太くて。」
これは悪口だから次付き合う女の子には言っちゃ駄目なやつだからな。覚えておけ。マジで。