一応女と言う役割を与えられたものとして、めんどくせぇと思いながらもやってきたことに「ムダ毛の処理」がある。
と言ってもそこまで体毛が濃いわけではなく、なんとなく夏にちょいちょいーと腕やら脇やらをそこら辺に転がっている剃刀で剃っていただけである。っていうか今思ったけど「ムダ毛の処理」ってワードすごくない?何かを守るためという使命を負っているはずなのに、もう初めから必要がないとされている「ムダ毛」のネーミング。無駄なのに生えているという、矛盾。
しかし下の毛に関して言えば薄いわけでもない。どちらかと言えば余すところなく生えているタイプ。芝生よりはAmazon的な生い茂り感。わかりやすく言えばもじゃもじゃ。
なのにも関わらず「ナチュラリストだから。」と言う謎の言い訳と共に処理をしたことは一回もなく、普段日の当たらない場所にいるというダンゴムシ的な性質も手伝い、私は40年以上そのAmazonを放置してきた。なんとなくそのあたりの治安が守られそうな気もしたから(何から?)毛があってもいいじゃないか、あはは、と思って生きてきた。歳取ればそのうち薄くなるっしょ!!よゆーだぜ!!
しかし年を重ねどもそのあたりのAmazonにおける生い茂り具合は衰えることなく、他の体毛が年々薄くなるのに反してむしろ生き生きとしているような気さえする。
もしやこいつ他の体毛のエネルギーを吸い取って成長し続けているのでは…?と疑うほどの鮮度の良さ。最近なんてちょっとメッシュなんか入れたぐらいにして。(※白髪)
このままでは私の眉毛やら頭髪やらも吸収合併されてしまうのでは、と初めて危機感を感じて下の毛の処理に着手した私の話なんだけど、大丈夫そ?
先日、知人の同じ年美魔女からおすすめされた家庭用脱毛器を手に入れた。
これさえあればもう鬼に金棒、ババァに脱毛器。届いた瞬間に確信した「これは勝ち戦‥!」と。
どれどれと説明書を読むに、その戦に出陣する前にそのAmazon一帯を人力で更地にしなければならない、との事。
うちの庭の芝刈りだってもうお手の物の私である。こんなちっさい面積のプチAmazon、一瞬で駆逐!!と風呂場に転がっていたカミソリ片手に意気揚々と挑んだ、出陣、出陣じゃー!!!!(ここで響くホラ貝の音。)
結論から言うと、剃毛舐めてた。
まずね、42年間連れ添っていたのにも関わらず、私の、私…?なんていうの私のその下の方についている子‥?娘‥?と向き合った事なかったんだよね。
いつも側にいる。いるのが当たり前すぎて知ろうと思ったことがなかった。側にいすぎて大切だって事を忘れていたよね…(遠い目。)
うっそうとしたそのあたりに埋もれる娘(以下、私の娘の事を花子と呼ぶ。)の何も知らないっつうか、形状についてのイメージが思った以上にモヤがかかっているというか、上からジーっと見てもいまいち分からないんですよ、どこが隆起していて、どこが陥没しているのかとか。形状認識を誤ると大事故を引き起こしかねないって言うのは我が家の庭の草刈りでもう熟知済みなんですよ。
なので、しょうがねぇっつって、もう風呂場においてある息子髭剃り用の鏡でもって確認したよね、右から左。ある時は下のアングルから。360度グラビアカメラマンのごとく舐めるように。
…………わたしこんな複雑な地形刈れないよ……!!!!(涙)
思ったより入り組んでた。全然庭より難易度高かった。Amazonっていうかもはや樹海。私がこの中入ったら完全に迷子になる自信あるし。
この時点でちょっと涙目だったんですけど、ととととと、とりあえずガワから…!!って事で、
いつまで眺めていようがその形状が変わらないことを察した私は剃刀を右手に、心の準備もないまま花子に挑んだのである。初期装備こん棒でAmazonの奥地へ。
…なんかまだシンプルデザインの外側から行こう…落ち着け、大丈夫大丈夫…(ぞりぞり…)うん…ほら意外に大丈夫…(ぞりぞり)順調順調…ここがこうだからこの角度でこう……
って…え…??これどこまで続いてんの…(ぞり…)え…そこ?え?そんな中まで続いてる…?
え?え?大丈夫?これもう内臓じゃね…???(剃刀を持つ手がここで止まる。)
なんか外側しか形状チェックしてなかったけど、中が本域だったっぽい。複雑なんてもんじゃない。迷路。もう絶対一回入ったら出てこれないシステムのやつ。蟻地獄。
後、その本気出した花子をまじまじ見て思ったけど、マジで凶悪な面してた。人食いそう。熱帯に咲いてる花っぽい。(ラフレシア。)ちょっとファンシーにしてもパックンフラワーくらいの凶悪面。
適当な剃刀を使って戦いに挑んだ事もあり、その日は絶望感を連れ来た道を引き返した。踏み込めなかった花子の未開の地から生えているものがちょっと残ってる。ちょび髭。入水管と出水管を出しているアサリにも似ていた。今だけは絶対誰にも見せられない…。
剃毛、マジムズイ。まだまだいろんな知らないことがあることを知った40代。
とりあえず翌日、新しい装備(剃刀)を携え改めて未開の地に踏み込み、命からがらではあったものの無事帰還した事を記す。
(しかし仕上がりイメージとして頭の中に描いていた花子は、赤ちゃんのあのかわいらしい「花ちゃん」みたいなビジュアルだったのだけれど、私の仕上がりは「オハナ婆さん」と言う感じ。「オハナ」と言うか「汚花」っつーか。ラフレシア的な。)