年々脳の記憶装置が劣化してきている。
多分、日常生活の大体の名前を「あれ」とか「これ」とか指示詞で乗り切っている感ある。
そして芸能人の顔や名前はおろか、息子の友達のお母さんとかも結構な割合で覚えられない。顔と名前が一致しない。親と子のセットが分からない。もう親子は紐でつないでいてほしいし、名札着用を義務付けたい。
私と言えば家に一日中引きこもってパソコンをポチポチする在宅フリーランス(ほぼ引きこもり)なんですけど、今まで一人で仕事していたのが2月からチームに入ってお仕事するようになったのでございます。
いやー、人と喋れるって良いですね。
それまでどんなに仕事に詰まっても、一人。なんや訳の分からないバグが起こっても一人。納期前に泣くのも一人。
いくら一人が好きって言っても限度があるだろうと思うくらいの孤独。
咳をしても一人の尾崎放哉状態なわけです。
それが今じゃどうでしょう、どうしてもわからないことがあればチームにチャットを飛ばし、それを先輩方が助けてくれるわけですよ、あああ人って温かい…人って良いね…ニンゲン…ヤサシイ…ニンゲン…スキ…タベチャイタイ…
一人でやっている頃は誰にも会わないから化粧もしないし、何ならお風呂とか3日くらい入らなかったからね。加齢臭の熟成が進むことこの上ない。もう「女として~」とか以前の問題。「人間として」やばいのは薄々気付いていた。
もうねー納期間近で三日風呂入っていない時とかもはや人間の匂いじゃないわけ。私の枕から昔外で飼っていた犬のタロの匂いがしたからね。(享年17歳。)
それが今ではいつ来るか分からないビデオ通話の為だけに毎日お風呂に入るようになりました!お母さん!私、人間に戻ったよ!
で、ここでチームの皆さんと否応なしに顔を合わせることになるのだけども。今回こそは顔をしっかり覚えていかないと仕事にも支障があると思い、チームメンバーの各々の特徴をメモしていく事にした。記憶力は労働力でカバーである。
一人目のAさん。
ふむふむ。とてもまじめで誠実そう。眼鏡をかけていて短髪。清潔感漂う風貌。丁寧。若者。
「Aさん…とても真面目で誠実そう。眼鏡をかけていて短髪。清潔感漂う風貌。丁寧。若者。」とメモ。まじまじ顔を見たおかげで目をつぶってもぼんやりとだが思い出せる。瞳を閉じれば瞼の裏にいる。
数日後、二人目のBさん。
ふむふむ…Bさんは眼鏡…短髪…清潔感…物腰柔らか…え…?デジャブ…??
まさかのBさんも「短髪眼鏡清潔感丁寧若者」。いや…でもBさんの方が若干面長…?あ、前髪がちょっと長いか…??
この時点で目を閉じるとAさんとBさんがコラージュされたような顔が思い浮かぶ。記憶のぼんやりさが加速していき、もう私の中では彼らは双子。ああああ…。
…大丈夫、前髪がちょっと長いほうがBさん、まだダイジョブダイジョウブ…
Bさんのメモに「Aさんよりちょっと前髪長い」と書き足した。
ええとそれで三人目のCさんなんですけど、まぁもう流れは出来上がっていたので読んでいる人は全くびっくりしないと思うのですけど、「短髪眼鏡清潔感丁寧若者」だったんだよなぁ…。(虚ろな目。)
まさかの三つ子爆誕。
いや、でも確かCさんは丸眼鏡だった。うんうん、違う違う、他二人はスクエアタイプだった、多分、うんうんうんうん。
Cさんメモに震える指で「丸眼鏡」と書き足す。
そんな感じでビジュアルの記憶はもうぼろ布のごとく部分的にしか機能していないし、一部屋に三人混ぜられて「さあて、どれがだーれだ☆」なんておちゃめなことやられたら、もう全然分からない自信しかないし、アハ体験くらい凝視してウォーリーを探せくらい血眼になると思うけど、一応ビデオ通話前には名前が出るしね!大丈夫!
(多分だいじょばない。)